Das Sandmannchen

ness2004-04-28

大ヒット中の映画「グッバイ、レーニン!」で
主人公の子供時代の思い出の重要な場面として出てきたパペットアニメサンドマンを見ようと、
「ドイツ・アニメーションの夕べ 〜パペット・アニメ「サンドマン」の世界」に行ってきた。
会場のユトレヒトは普通のマンションの一階の一部屋を改造したような感じで、
開場前から並んでいた30名程度のお客さんが入るとぎゅうぎゅうでいっぱいになる位の大きさのこじんまりしたお店だった。
女性が9割近くというかなり不慣れな状況に並んでいる時は大丈夫かいなと思っていたけれど、
(実際かわいらしいパペットアニメファンはおしゃれな女性が多いのだろうなあ・・・)
はじまってみるとなかなかにすばらしかった。


サンドマン東ドイツでやっていたという番組で、
どうやらヨーロッパでは結構ポピュラーらしいアンデルセンの童話「眠りの精オールルゲイエ」というのを基にしているらしい。
もともとサンドマンというのは砂で銅食器やフローリングを磨く職業らしく、
眠らない子には目に砂をかけるたり目をくりぬいたりする!という恐ろしい話だったのだが、
アンデルセンが「眠れない子のまぶたにミルクをたらして眠らせる」という
怖くない、優しいお話にしたんだそう。(目にミルクを入れられるのも怖いと思うけど)


まだ東西ドイツに壁のない1959年に放映が開始され、
人気があって西ドイツでも作られたというサンドマン
毎日夕方に放送され、当時外国に出られなかった東ドイツの人たちは
サンドマンが世界中のあちこちを旅するのを見て楽しんでいたそうだ。


そんなサンドマン、番組の構成は

  1. サンドマンが現れて(主に乗り物に乗って)子供に会いに行く
  2. 子供達とテレビを見る
  3. サンドマンとは関係ないお話。実はこれがメイン)
  4. テレビを見終わって帰っていくサンドマン。砂をまく。

というものなんだけれど、
今回司会をなさっていた路川さんのセレクトにより
お話部分をカットしてサンドマンが出てくる部分から「サンドマン傑作選」を鑑賞。


初回放送のサンドマンはテレビを見終わった後、
サンドマンが雪の積もる家の外で壁にもたれかかって眠り込んでしまうという
驚きの展開であせったけれど、
(子供達からかわいそー!という手紙がたくさん来たらしい。)
その後だんだんと人形もかわいらしい形に収まっていったようだ。
サンドマンの人形自体のかわいらしさもさることながら、
目を引くのはサンドマンが身につける小物類の芸の細かさ!
毎回季節、国、宇宙!などシチュエーションにあわせてさまざまな衣装で現れるサンドマンは、
たとえば海辺ではひっそりとサンバイザーをつけてみたり
砂の入った袋も毎回いろいろな形のものが出てきたり、
そのくせトレードマークのひげは過剰なくらいアピールしてみたりと、
国営放送の予算を使ってのクオリティの高さを見せ付けてくれるのだけれど、
とりわけ毎回乗ってくる乗り物のすごいことすごいこと。
全体的に微妙なリアルさで作ってあって、
町並みなんかもドイツ国内の都市や建物をなかなか忠実に作っているのだけれど、
乗ってくる車やソリなんかのディテールもかなりこだわりの仕上がり。
それだけでは飽き足らず、ジェットやロケットや月面探査機なんていうような
SFなマシンまで惚れ惚れするような細かい芸で魅せてくれる。
なかでもサンドマンが月に行く回は秀逸。
月面を行き来するマシンの触覚のようなセンサーや全体の挙動は感動もの。
そのくせ話の構成は誰もいない月に行ってモニター越しに子供がテレビを見る様子を見る、
という、「月行かなくていいじゃん!」といいたくなる展開。
しかしながら実際にロシアの宇宙船に乗ってサンドマンが宇宙に行っちゃうような時代、
子供たちにも宇宙に憧れを持たせることが当時の東側体制のプライドだったんだなあと思う。


西側で作られたというサンドマンも上映。
うーむ、人気投票?で負けて東側のサンドマンが残ったというだけあって、
いまいちかわいくないというか、
バイクでテレビを運んできて道端のカタツムリに無理やり見せる
変な電気屋の兄ちゃんのようなどこか怖いサンドマンはいまいちだった。


サンドマンはどの話もかわいくて楽しい。
それでいて細かい作りはそこまでするかってくらい凝っている。
突っ込みどころも満載だけど、そこがまた愛嬌で人気なのではないだろうか。
BSとかでまとめてやってくれないかなー。